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富山市楡原(細入)の赤座さん 〜地元を愛するリモートワーカーの小さなJターン〜

2021年に富山市の大沢野地域から「小さなJターン」をした赤座さん一家。富山市楡原(にれはら)地区で、家族5人で暮らしています。

 

細入出身の夫・赤座久樹(あかざひさき)さんは、リモートワークで働くプログラマー。東京のIT企業の社員として、細入の自宅で全国のお客さんを相手にシステム開発をしています。

妻の文子(のりこ)さんと一緒に、移住のきっかけや細入での生活について語ってもらいました。

移住されてきた経緯と決め手を教えてください。

僕は旧細入村の庵谷地区出身で、保育所・小学校・中学校時代は楡原に通園・通学していました。結婚してからは大沢野地域のアパートに住んでいましたが、ずっと地元に戻りたいとは思っていました。僕自身が地元大好き人間ですし、自然に恵まれた環境でのびのび過ごすことは、小さな子供たちにとって最高の原体験だと思っているからです。

 

とは言っても、細入にはお店なども少なくて、現代人が普通の生活をするのに不便が多いのは間違いありません。賃貸住宅もないのでマイホームを買う必要があり、色々な意味で覚悟が必要でした。

 

長女の小学校入学も近づいてきて、そのまま大沢野地域の学校に入学させる選択肢も考えていた中、何となく不動産のサイトを見ていたら、楡原地区にかなり状態のいい中古住宅を見つけました。早速見学に行き、妻も気に入ってくれたので、購入・リノベーションして2021年の3月に楡原に引っ越し、長女は神通碧小学校に入学することができました。次女・三女もほそいり保育所に通っていて、子供たちはみんなのびのび楽しそうです。

 

このタイミングでこの家に出会わなかったら、ずっと細入に戻って来られなかったかも知れません。運命的な出会いにとても感謝しています。

 

僕にとっては、旧細入村・神通峡地域全体が「地元」です。それでも楡原に住むのは初めてですし、ある程度は移住者の感覚もあります。とっても狭い範囲ですが、庵谷→大沢野→楡原の「小さなJターン」てところでしょうか(笑)


夫が細入出身で、富山県の村というものに強い憧れがあったのはもちろんですけれど、とにかく自然、山、川が美しいところが一番です。また、私は妊娠出産がとても人生の大きな出来事となったので、子供に親が残せるものってなんだろう?と真剣に考えたときに、日々の情景とか景観だなと思ったんです。

 

家族で過ごした記憶に、山が好き、川が好き、そこで育った自分が好き、っていうものがあったら、自己肯定感が根付いてそこからいくらでも広がっていけるんじゃないかなという希望的な想いがあってですね。


細入地域はどんな印象ですか?移住した時の印象・移住してからの印象を教えてください。

私は富山市内の出身なので大沢野の住宅街から結構遠いのかな…買い物億劫そうだな…みたいな印象はやはりありましたけど、住んでみると意外と気にならないものですね。そういう生活リズムになるというか。

 

小さい子どもたちは、富山駅や大型ショッピングセンターへ行く時に「まだ?まだ?」ってなりますけど。文明の力も借りて。一日がかりの大きなイベントと思ってもらってわぁーっと楽しんでいます。


少し細かい話ですが、同じ旧細入村の中でも、庵谷と楡原に両方住んでみると、それぞれかなり違う部分があると実感しました。たとえば保育所や学校に通うときに、楡原であれば歩いていくことができますが、庵谷やその他の多くの集落からはスクールバスや親の車での送迎が必須です。店も楡原にはいくつかあるので、小規模な買い物はできます。生活に不便な細入地域の中で、楡原は比較的便利な場所ですね。

 

実家のある庵谷には、店も駅もないので、楡原以上にかなり不便な場所です。その代わりとても静かで、自然のなかでゆったり過ごしたい場合は楡原よりも庵谷の方が良いです。小さな集落なので、住民同士もお互いをよく知っている印象です。「ガチな田舎暮らし」を求める人は、庵谷の方が向いている知れません(笑)

 

他にも、猪谷・岩稲・町長・布尻などなど、色々な集落がありますし、楡原では自治会(町内会)が4つに分かれていて、それぞれの歴史・特色があります。住んでみないと分からない集落ごとの個性が必ずあるはずで、神通峡地域の中でも多様性があるのが面白いと思います。


細入での生活はいかがですか?

仕事はコロナ以前からずっとリモートワークなので、平日の仕事中もほぼ楡原の自宅にいます。実はリモートワークができる会社に入ったのも「いつか細入に戻ってもスムーズに仕事が続けられるように」という理由が大きかったのです。リモートワーカーはどこにでも住めますが、僕にとっては完全に「地元に居続けるための仕事環境」ですね!

Web会議で窓の外の風景を映すと、同僚もお客さんもびっくりして会話が弾みます。

 

3人子どもたちがいるのでせわしなく過ぎていますが、近くに実家があるのでとても助かっています。天気の良い日は、林林や天湖森へ体を動かしに行ったり、楽今日館の温泉へ入りに行ったり、子どもたちも楽しそうですね。家のウッドデッキからの眺めが最高なので、仕事中に山を見ながら休憩したり、バーベキューをしたり星を見たり、僕にとっては自宅にいるのが何よりの贅沢です。


庭が広いのは本当にありがたくて、以前住んでいた方が残してくださった花々が四季を通して咲いてくれるので、花を摘んだり飾ったりが癒されます。山や庭の草木の移り変わりを眺めているだけで、力が湧いてくるような、励まされるような気持ちになります。


好きなスポットや食べ物はありますか?

夏は猪谷のプールが楽しかったです。あと私は神通峡ですね。桜も紅葉も綺麗ですけど、冬の雪がかかった神通峡と楽今日館の灯火が一番好きです。


おすすめの絶景スポットはこのあたりです。マニアックですみません!

・神通碧小学校の教室窓から眺める神通川

・楡原八幡宮から見下ろす楡原の全景

・庵谷公民館のT字路から眺める第一発電所と寺津橋

・寺津橋から眺める片路峡

 

楽今日館の食堂と、居酒屋丹紋は、お酒も料理も最高です。


移住されてきて困ったことは?

41号線(旧道)沿いの家なので、バイクやトラックが多い日は時間帯によってうるさいですね。楡原は村の真ん中が41号線で分断されているので、子供たちの登下校時や放課後も交通安全にはかなり気を使いますし、もう少し安心して歩ける環境になるとありがたいです。


困ったわけではないんですが、滑り台やブランコがある様な、いわゆる公園みたいなところがないことがちょっと寂しいなと思いました。でも子どもたちは広場のベンチやパーゴラなんかで本当自由に遊ぶんですけれど…


移住して生活するにあたり、注意することはありますか?

買い物や公共交通機関の不便さはもちろんですが、冬の大雪には特に注意してください。年によって違いはあるものの、富山市街地とは比べ物にならないほど降るので、玄関前の除雪はかなり大変です。道路に融雪剤が撒かれるので、車も錆びやすいです。雪遊びには不自由しないので、子供たちは大雪にいつもワクワクしていますが(笑)

 

「田舎は人間関係が面倒くさい」というイメージが強いかも知れませんが、細入に関しては、割と現代的なメンタリティの人が多い印象です。富山市中心部に通勤している人が多いためか、「村独自の古いしきたり」みたいな息苦しさは個人的には感じません。各家庭のプライバシーをしっかり尊重しつつ田舎暮らしをしたい人にとっては、丁度よい場所ではないでしょうか。


移住を考えている方へのアドバイスがあれば教えてください。

個人的にはこの地域が昔から大好きで、移住者もどんどん増えてほしいとは思っていますが、色々と話したように、決して良い事ずくめではありません。深く考えずに移住してしまって後悔するのだけは避けてほしいので、まずは丁寧に情報を集めてじっくり考えてほしいと思います。

 

ネット上を検索するだけでは、神通峡地域の情報はまだまだ不足しています。もし興味があれば、ぜひ一度自分の目で見に来ていただければと思います。このホームページから問い合わせれば、地域の誰か(僕かも知れません)が丁寧に案内してくれると思いますよ!


移住者を受け入れる側へのアドバイスがあれば教えて下さい。

空き家情報の公開はとても良いと思うのですが、他にも色々できることがあると思います。

例えば「永住前提」だけではなく、もっと気軽に住んでみることができるように、ゲストハウスや賃貸住宅をいくつか作れたら選択肢が広がるのではないでしょうか。「試しに住んでみて、無理なら諦める、良かったら定住」という流動性ができると、長期的には移住も活発になっていくと思います。


富山って小さくても新築戸建てを持って一丁前みたいな文化がありますけど、一昔前の新興住宅街がゴーストタウン化している現状を建築会社さんから聞きまして。そこから中古住宅のリノベーションっていう発想を知ったんですよね。リノベーションを得意とする不動産会社さんがうまく、細入の物件と移住したい方の間を取り持ってくれる環境やシステムが整えば良いなと思います。


ありがとうございました!

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